きっちりお返しはしたつもりになって店を出た。
店の外では坂巻さんが待っていて、私が出てくると近寄ってきてお礼を言われた。



「どうもありがとう」


スマートにお礼を言えるなんて羨ましい。
きっとこの人は誰かに傷付けられたり、恥ずかしい思いもしないで暮らして来たんだろうと思う。


はい…と袋の中からアイスを取り出して手渡す。
指先が少し触れてビクッとしたけど、努めて平静を装った。


アイスを食べながら歩き始めると、坂巻さんが私に言った。


「俺、さっきの諸住さんが別人に見えたよ」

「え?」

「ほら、さっきコンビニで『駄目です!』と断言した時。これまでのイメージとは違って、積極的だから驚いた」

「あ、あの…」

「あんな風に自分の意見もちゃんと言えるんだな。それが分かって少し安心したよ」


彼はそう言うとばくっとアイスの残りを頬張る。
シャリシャリと大きく顎を動かして噛み砕く音が聞こえ、冷たくないのかな…と窺った。


「うめぇ。こうやって一気に食べて爽快感を味わうのがいいんだよな」