「はぁーはぁーはぁーはぁー」


大きく肩を上下させて駅の構内へ入る。
足を止めると流石に草臥れた…とこぼし、トンと背中を壁にくっ付けた。


(気疲れした…。やっぱり憧れの人と二人っきりって緊張する……)


多分、私よりも気疲れしてるのは坂巻さんの方なのに、そう思ってバカだ…と呆れた。


私みたいな会話の弾まない女子とお茶しようなんて言って損だった、ときっと彼は思ってる。

だから送るのもやめて、今頃は別の誰かと飲み直そうと連絡し直してるところじゃないのか。


(折角誘われたのに。…バカな杏)


後悔しても今更遅い…と溜息を吐く。

ホームに向いて歩き出しながら、せめてもの救いは、彼と一緒にいるところを誰にも見つからなかったことだな…と、そこだけは大いに安堵して電車に乗った……。