憧れの彼と、イイ仲になりたいんです!

挙げ句の果てにはそういう気分になってしまう。
話せないのは自分が怖じ気づいてるからなのに、別の事にすり替えようとしてる。


坂巻さんはその後も色々と私に話しかけてきた。

そのどれにも中途半端な返事しか出来ない私とは会話も弾まず、入店して十五分くらいで、彼も流石に話が尽きてしまったらしくて……。



「出ようか」


立ち上がる彼にホッとしながら息を吐く。
ようやく苦行が終わると思うと、良かった…としか言いようがない。


「このまま駅まで送って行ってあげたいんだけど」


店を出てそう言う彼にビクつく。
目線を向けると彼の顔が少し引きつった。


「悪いんだけど、駅までもう直ぐだから気を付けて行って。俺、これから行かないといけない場所が出来たから」


ごめん…と手を立てて謝る。
こっちはそんなの気にせずどうぞ、と言ってしまいそうで、慌てるようにペコンと頭を下げて走り出した。



「転ぶなよ!」


後ろから聞こえる声に振り向いて頷く。
だけど、足を止めることもなく、一気にダッシュして駅の構内へ向かった。