「濡れると毛先が跳ねて巻いたりするんです。だから、毎朝アイロンで伸ばすのが必須で…」


話しながら髪の毛を触る。
そのクセにも理由があったんだと分かり、ふぅん…と改めて納得した。


「そういうとこ、お互いにもっと見せ合おうよ。
俺の寝起きの悪いとことか見たくない?
そういう仲に俺とはなれない?
今直ぐでなくてもいいけど、いずれはなってみようよ」


イイ仲になりたいんだろう?と問いかけると、顔面を赤く染めながら狼狽え、「あれは単なる言い間違えで…」と弁解を始めるけど、俺はもうそれを耳にする余裕は何処にも無くて。


「好きなら付き合う。それ以外に仲良くなれる方法なんて知らないよ」


杏…と呼びかけながら手を握り、彼女の唇を塞いだ。
声を出そうとして慌てる彼女のことをきつく抱き締め、深いキスを落としていく。


全身がビクッと震え、一気に力が入る。
それを見てるとキスも初めてなんだと分かり、こっちまで緊張が走った。


こだまする心音を聞きながらゆっくりとキスを繰り返した後で、ぼうっとしている彼女に向いて、「返事は?」と求めた。