「坂巻さんは素敵な人なんです。私がずっと憧れて、大好きになってるだけだからほっといて!」


相手の女子達はキレたように叫んだ彼女を小馬鹿にして笑う。
もう完全に我慢の限界だと思って立ち上がった瞬間、小山課長が俺を制して「此処にいろ」と言った。


「俺が行く。お前は出てくるな」


そう囁くと、足元に向かって声を発した__。

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あのさ…と声を掛けたのはいいが、俺はこの先どうすりゃいいんだ。


言葉が出てこないぞ…と課長を恨めしく思いながらも階段を下りきると、驚いた様に目を剥く彼女に、取り敢えずは笑おうと口角を上げた。


ヒクッと頬の肉が引き攣る。

照れくささと間抜けさとの両方が胸の中にあり、いつもの様には笑いかけれなかった。



「…す、すみません!」


急に謝りだす彼女をキョトンと見遣る。
頭を項垂れると両手を前で組み、躊躇いがちに理由を述べた。


「私、人前であんなことを言って…」


しかも、あんな大声で…と振り返りながら、顔を赤く染めていく。


「あれは、その、何というか……」