(間一髪…)


壁に寄り掛かりながら肩を落とす。
偶然とは言え、課長がいてくれて良かった。


はぁー…と深い息を吐き出す。
何だかよく知らないけど、自分なりには頑張ったよね?


頷きながら、うん…と呟く。
助かった…という思いもあったけど、何より恥ずかしかった…という気持ちが生まれた。


(「ほっといて」とかよく言えたな。しかも、あんな大声出したの久し振りだし、何だかどさくさに紛れて、坂巻さんを好きとかも言っちゃったし……)


思い出すと、ひゃーっと焦る。
頭にきてたからって、正直過ぎたかもしれない。


ははは…と取り繕うように一人で笑った。
社内で私が笑うなんて、これまで一度もなかったことだ。



「……ねぇ、あのさ」


頭上から声がしてビクッとする。
もしかして、まだ誰かいた?


コツンコツン…とゆっくり下りてくる足音を耳にする。

目を向けると顔を赤く染めてる人がいて、私はその人を視界に入れた途端、ドバーッと身体中から汗が噴き出すような錯覚を覚えた。



「さ…さかまき……さん…」


まさか、憧れの人がいる!?
どうして?何故………