「こんな所でイジメか?みっともないから止めておけよ」


階段を下りてくる声の主に先輩達が顔を強張らせる。
私達の前に現れたのは、営業二課の課長の小山さんだった。


彼は険しい表情をしながら腕を組み、先輩達を睨んで「話は俺が聞こうか」と迫ってくる。


先輩も他の女子達も青くなる。
まさか、上の階に上司がいるとは思ってもなかった様子で、どうする…と言いながら縮こまった。
 

私も息を飲み、いきなり現れた救世主を見遣る。

小山課長は私に目を向けると微かに口角を上げ、直ぐにそれを下げると先輩達を振り返った。


「中に入れ。たっぷり説教してやる」


意地悪そうに言い、ほらほら…と鉄製のドアを開けさせる。


「…あ、君はいいよ。諸住さん」


私が足を踏み出そうとすると、小山課長は手で制した。


「そこでもう少し落ち着いてから入りなさい。
怖い思いをしたね。彼女達のことは俺に任せておいていいから」


そう言うと先輩達を中に押し込んでドアを閉めた。

閉まっていくドアを見ていると急に気が抜けてしまい、ヘナヘナ…と腰が抜けて足元に座り込みそうになった。