まるで坂巻さんを諦める代わりの取引でもするみたい。
こんな人達の言うことなんて、誰が耳を貸すもんか!


「私は別に誰に話されたって平気です。坂巻さんのことは好きだし、それが周りの人達に知れたって怖くない!」


子供の頃は、皆に原田のことが好きだと知れ渡って恐ろしくなった。

だけど、今は坂巻さんのことを好きだと思う気持ちを大切にしたいし、人を好きになれることを怖いとは思いたくもない。


「坂巻さんは素敵な人なんです。私がずっと憧れて、大好きになってるだけだからほっといて!」


貴女達も彼に思われたいならアタックを繰り返せばいいんだ。皆、私よりも遥かに女らしくて綺麗で、素敵な人達ばかりなんだから。



「……もうそれくらいにしておけよ。さっきから全部丸聞こえだぞ」


低い声が頭の上からして、私達は全員ビクッとしながら振り仰いだ。

非常階段の隙間からは男性が覗き込んでいて、それが誰かをいち早く察したのは先輩だ。


「課長!」


慌てた声を聞いた女子達が「まず…」と声を潜める。
その様子を目にして、私は課長って誰?とキョトンとした。