外へ出たらボコボコにされるのかな…と心配しながら、足を前に踏み出すしかない。




「……ねぇ、昨日のことなんだけど」


ドアを閉めると、坂巻さんと同期の先輩が口火を切った。

私はその冷たそうな声に唾を飲み込み、ドンドンと激しさを増す心音を耳にした。


「諸住さんは坂巻君と付き合ってるの?
この間訊いた時は確か、付き合ってる様な感じじゃなかったわよね。
…いつ彼に言い寄ったの?それとも、まさかとは思うけど言い寄られた?」


クスッと小馬鹿にするように笑うところを見れば、彼が私に言い寄ることなんてないと思ってる感じだ。


「流石にそれはないんじゃない?」

「あったら主任の目が変だよ」


一緒に外へ出た女子達が口を挟む。
そんな風に蔑まなくても、自分が彼に不似合いなのは十分分かってるつもりだ。

だから、今更こんな言葉を投げ掛けられても悔しくはない。だって、中学以来、いつも色々と諦めてきたから。


恋することも、誰かを好きになることも全部諦めてきた。

大人になって、せめて憧れるだけなら構わないだろうと思い、坂巻さんを見つめてはいたけど。