まるで、中学時代のことでも思い出したかの様に震える彼女の指先を見つめ、俺は「大丈夫」と声をかけた。

　
「心配しなくてもアイツら何もしてこないよ」


ガキじゃないんだから…と言いながらも、何かあったら守ってやろうと決めていた。

自分の大事な女性をどんなものからも守ってやりたい気持ちで、そっと彼女の指先を掬う。


「……俺、君がこの指先で髪を弄るのを見るのが好きなんだ。考え込んでる仕草も可愛いし、諦めた様に溜息を吐く姿も毎日のように見つめてきた」


振り返る彼女の目元が揺れている。
不安に駆られているその眼差しに微笑みかけ、「平気だよ」と付け足した。


「皆大人なんだし、子供みたいなイタズラもしてこない。それに、もしも何かあったら俺が黙ってない。

上に文句も言ってやるし、何ならこれまでの逆で、俺自身が彼女達に仕事を押し付けたって構わないんだから」


こういう時、主任で良かったなぁ…なんて。ロクでもねぇな、俺も。


「でも、坂巻さんの立場が…」

「俺の立場？そんなの気にしてなくてもいいよ」