「人が折角プライベートを楽しんでるのに、無粋に声をかけてくるんじゃねぇよ」


ギロッと睨みを利かせて「散れ!」と言ってやりたい。
でも、そうすれば、月曜日からの彼女への風当たりが急に強くなるかもしれない。


そうなれば、彼女はまた人に嫌われることを怖がり、これまで以上に女子からの頼まれ事を断らずに残業するんじゃないのか。

話したいと俺が思っても今みたいに逃げ出して、言いたい言葉も何もかも、届かないままになってしまうんじゃないのか。


(冗談じゃないよ。ようやくチャンスが来たのに)


金曜日、本屋で待ち合わせてる間に読んだタウン誌の中に、この花火大会のことが載っていた。

彼女と初めて二人きりで出掛けるのなら、この人混みの多い催し物が一番じゃないのかと思って誘った。

恥ずかしがり屋の彼女でも、人が多ければ紛れてしまうからイケるんじゃないかと考えた。


………でも、結果は最悪。

彼女の同級生グループに出逢ったり、嘗て片思いしていた相手にも会ったりして__。


(それでもお互いを知ることには繋がった。ここでもう一押し出来れば、結果オーライになるんだ)