諸住さんは顔を緊張させて声を上げ、すくっと立つと女性達に言った。


「わ、私と主任はさっきそこで偶然会って。だから、別に一緒に来たわけじゃありません、から……」


そう宣言すると俺を振り返り、「すみません」と頭を下げた。
俺は一瞬何が何だか分からずにぼうっとして、彼女のことを見つめたまま、声も発することが出来なかった。


彼女はきゅっと唇を噛むと「失礼します」と一礼して、俺の前から立ち去ろうとした。


「待って!!」


反射的に腕を握って捕まえる。

後ろに引かれる格好になった彼女が倒れ込みそうになり、俺は慌ててその背中を支えようと立ち上がった。

肩に手が触れ、驚いた彼女が振り返る。

困った様な顔つきでいる彼女が咄嗟に考えたことが頭に浮かび、俺はその肩から手を離さず、返ってぎゅっと力を入れて握り直した。


同僚の女性達もそれを見て唖然とする。
俺はこれまで自分の素顔を見せずに、彼女達の前では笑ってばかりいたんだが___



「……あのなぁ」


流石に今夜は邪魔するなと思い、不機嫌そうな声を発した。
目が点になる女性達を眺め、更に声を低める。