俺はこの雑踏に紛れて、彼女に気持ちを告白しようと近寄った。
肩が触れると彼女がビクッとして振り仰ぎ、俺はその眼差しを見つめたまま唇を開いた。



「あれー?坂巻くんじゃないー?」

「あ、本当だ。主任〜!」


甲高い声が聞こえて目を向けると、二課の女性達が連れ立って歩いてくる。


「坂巻さんも来てたんですかぁ?」

「偶然ですねー。良かったら一緒に花火観ませんー?」


賑やかしく寄ってきた連中に思いきり嫌そうな顔をした。
どうしてこいつらは、余計なところでタイミング悪く出現するんだ。


「……あれ?もしかして、この人…」


目の前にいる彼女がギクッと肩を竦ませる。
俺はちらっと彼女に目線を配って隠そうかとしたんだが、女子の目はどうにも誤魔化せなかった。


「やっぱり諸住さんっ!」


回り込んだ女子の一人がそう言い、他の連中が「ええーっ!!」と声を張り上げた。


「どうして諸住さんが主任と?」

「ひょっとして二人だけで来てるんですか?」


信じられないといった雰囲気で訊かれ、いけねぇのかよ…と言いたくなった。


「あ、あの!」