人に嫌われたくないと思っていたんだ。
残業を手伝ってもらって、図々しいとか言われるのが嫌だったんだろう。


「でも、君のそんな頑張りを、俺だけじゃなくて、ちゃんと上司も見ていたよ。君も直接褒められただろ。課長から」

「だけど、あれは坂巻さんが半分は手伝ってくれたからで」

「その前から感心してたんだよ。丁寧な仕事ぶりだと言っているのも耳にしたし、皆も見習えばいいのに…とボヤいてた」


あの時が最初じゃないんだと言うと、彼女は驚いた表情のまま頬を染める。

それを見ながらまた詰まらない嫉妬が顔を出しそうになり、急いで話を元に戻した。


「俺、ビヤガーデンの喫煙コーナーで諸住さんを見かけた時にラッキーだと思ったんだ。
絶対にいつか声を話しかけてみようと狙ってたし、今がその時だと思って近付いた。
そしたら、君の溜息混じりの声が聞こえて…」


『いいなぁ。皆は坂巻さんと話が出来て…』


「羨ましい感じに聞こえたから、これは脈アリかな、と思って話そうと誘ったんだ。
なのに、君は走って逃げ出すんだもんな。