「お前の彼女、その人にいつも仕事放って帰るんだろ。相手が後輩なのをいいことに大胆過ぎるよな」


半ば呆れるように言っているが、最後には自分にもそんな後輩が欲しい…とこぼしている。


（アホか。仕事くらい人を使わずに自分でやれよ）


呆れながら煙を吹き出して外へ出た。
中で話していた二人も出てきて、そこにやって来たのは二課で働く女子社員だ。



「的場さーん」


甘えるような声を聞いて思い出した。彼女はいつも諸住 杏に仕事を頼む女子だ。

二人は楽しそうにその場で立ち話を始め、公衆の面前にも関わらず、お構いなしでイチャイチャとしている。


（よくそんな平気で嘘を吐く女と付き合ってんな）


ケッ…と唾を吐き出しそうなイライラ感を募らせて部署に戻ると、諸住 杏はまたしても髪の毛を弄っていた。


「はぁ…」


困ったように、どうしよう…と小さな声が漏れだす。
それでも相談せずに椅子から立ち上がり、外へ出ると、暫くそのまま戻ってこない。



（どうしたんだ？）


まさか仕事が嫌になって逃げ出したのか？と思っていると、彼女は両手にデータファイルを抱え込んで戻ってきた。