早口で喋ると紙コップを手渡された。
ストローの刺さった中身はカルピスだと教えられ、「ありがとうございます」とお礼を述べた。


ふわっと優しく微笑む彼が手を握る。
ゆっくりと歩きだす歩調に合わせながら、じわっと胸の中が熱くなった……。



(ありがとう、坂巻さん)


胸の中でお礼を繰り返しながら切なくなる。

彼が居てくれることが心強いけど苦しくて、きゅうっと胸の奥が痛んだ__。




会場内のアナウンスに寄れば、花火は海岸の沖合から打ち上げられるらしい。

それで私達は波打ち際に並んだ階段状のブロックの上に腰かけ、無言で露店の商品を食べ始めた。


坂巻さんは焼き鳥を食べながら時々「生ビールが欲しい」と呟き、私はそれを耳にして、自分が運転免許を持ってないことを後悔する。


まるで陰と陽の様な雰囲気でいる私達の周りには、同じようなカップルが多くて、やたらとベタベタくっ付いて、肩が触れ合っても髪の毛に触れられても平気そうに笑い合っている……。


(あんなことされたら無理。絶対に即死する)