幻惑な夜

…妊娠検査薬ってやつだろう。

だよな、多分…。

俺はその妊娠検査薬ってやつを手に持ったまま、しばらく固まってしまう。

ゆっくりと固まった思考がほぐれ始めて最初に思ったのは、やっぱりこれって赤い縦線がはいってるとアウトなのだろうか? と言うものだ。

すぐに俺は、アウトと言う言葉を使った自分に嫌気がさす。

そう言う言い回しが自然に頭に浮かぶ俺は、つくづく優しくない男だと思う。

…二度目だぞ。
サルか俺は…。

そう思いながら、いや、避妊はしていたと意味のない擁護を自分に向ける。

…恭子はいつ妊娠していると気付いたんだろう?

検査薬を使うって事は、それなりに生理も遅れていたに違いない。

俺は全く気付かなかった。

それどころか、俺は昨日、恭子とセックスしている…。

生理が遅れて、もしかしたらまた…そう思い続けている恭子と、俺はセックスした。

昨日だけじゃない。
おとといも、その前の日も…。

恭子はどんな気持ちで、俺に抱かれていたのだろうか…。