腕にまとわりついたリンちゃんとやらに
アオトはさらわれ。

1人残されたまま、降りる駅についてしまった。

もう、視界に入ってないし…と、
黙って降りたあたしを…呼び止める声なんて
もちろんなかった。


そりゃそうでしょ。
自分で自分に呆れながら…


一度だけ、電車を振り返ってみた。


え?


アオトが、こっちを見ていた。

リンちゃんが、まとわりついた腕を
そのままにして。

胸がギュッと痛み。


やられた…。


そんな独り言を吐いて、出口へと向かった。


ダメだよ!
あんなやつに、心奪われたら!
絶対ダメ。



いつのまにか酔いも覚めて。
一人暮らしの暗い部屋に入ると
ぐっと寂しくなる。

ニコニコ星人が、頭に浮かんでは
何なの!と、打ち消し。

帰り間際の、あたしを見つめる顔を
思い出しては胸が騒いで。


明日は…電車どうしよう。

あたしがいることに、気がついていた。
きっと…盗み見てること、知ってたんだよね。

恥ずかしい。
あたし、ほんとかっこ悪い…。

ダメだ。違う車両に乗ろう。
もうこれ以上、恥はさらせない。

アオト…のバカ。

あたしの結論とはうらはらに、
頭の中は…
アオトのことばかりになってることを。

自分でも、受け止めきれないでいた。