人の波に逆らうわけにいかず、
2人一緒に入り口へと押しやられた。


当たり前のように2人並んで、列車に
おさまると。

ミチカずっとこっちにいたの?
と、上から声がする。

電車が混んでて、距離が近すぎる。
でかいアオトの顔を見上げるのは難しく。

顔を見れないせいか…かえって話しやすく
なってしまった。

あたしは、異動でこっちに。
そろそろ2ヶ月くらいかな。
アオトは?

俺も、わりとあちこち短期で回ってる。
まあ、家はこの辺だから結局帰って
来るんだけどね。

家と言われて…あたしの頭はいっぱいになる。

聞いてしまおうか…。
吐き気がするほど、緊張してる。
でも、お酒も入ってる今しか聞けないかも!


アオト…。

ん?

こちらを向く気配を感じながら、
口を開こうとした時、

アオちゃん!!と、後ろから声がした。


え??と、アオトとあたし、2人で振り返ると。

女子大生みたいな女の子が、アオトの
背中を両手で触れて見上げていた。

アオトは、ビックリした顔しながらも、

リンちゃん?どうしたの?飲み会帰り?
と、いつものニコニコ星人をやっている。


そうなの。サークルの打ち上げでね。
イケメン全然いなくて、がっかりだったけど
アオちゃんに会えてラッキー!!
と、自然に腕を取る。


2人の会話を聞きながら、あたしの
さっきまでの緊張と…嬉しさが…
しゅるしゅると消えていくのを感じていた。


やっぱり、変わってない。こいつ。