「はぁ……」


「めっちゃ近いじゃん!会社から2駅とか朝もギリギリでいいし最高!」



うるさいよ藤沢。
なんでたこ焼き器背負ってんの?
気合い入れる場所間違ってるじゃん。


肝心なタコがねぇよ、タコが!!


「何だかんだ私も香恵のアパートとか初。ところでスーパーって近いの?」


「買い出し、買い出し〜♪♪やっぱ酒も必要だよね」




仕事終わり、みんなで会社を出て電車に乗った私たちは、もちろんみんなそろって2駅先の私のアパートがある駅で降りた。


駅からの道を交番に向かって歩いている今、



私の頭の中では葛藤が生まれる。


1つはやっぱり、こんな日でも蓮見さんの顔が見たいなって葛藤で、だけどコイツら連れて蓮見さんに会いに行くなんてとてもじゃないけど考えられないな……いや、でも会いたいなって。

エンドレス葛藤。


2つ目は、どうせ会えないなら交番の少し手前を左折して別ルートでアパートまで向かおうか……それとも交番を通過してその一瞬で蓮見さんを目に焼き付けようか……って。


往生際の悪い葛藤。


そしたら万が一交番に蓮見さんが居たとしても、私が通ったことに気付かれずに済むだろうし。いや、蓮見さんのことだから気づいたって何のアクションもないだろうけど。



「とりあえず、みんなはしゃぎすぎ!スーパーは結構遠いんだよね。先にアパート行って、荷物置いたら買い出しジャンケンしよう」



「でも、香恵しか場所知らねーじゃん」



ゲッ。
まじだ、そうじゃん。


つまり、



「じゃあ香恵は確定ってことで、他にもう1人くらい出そうよ」



ニッと笑う麗奈に、やっぱり私は行く羽目になるのかと溜息をこぼした私はふと交番前に見知った人を見つけて目を見開いた。