ーーー2時限目。

次の授業は数学でテスト時間だった。

私は早目に終わらせて図書室で本を読んでいたのだが、急にドアの開く音がした。

「誰・・・って、先輩!?」

「も、桃園さん?」

そこには魁先輩が居て驚いて立ち上がると体勢を崩してしまう。

転ぶ・・・!と目を強く瞑るも痛みはこずに逆に暖かいものに包まれている感覚があり恐る恐る目を開ける。

「っ・・・!?」

「大丈夫ですか?怪我とかしてません?」

心配してくれるのは有り難いけど近過ぎ・・・!

鼻が触れるほどに近い距離なのに先輩は心配そうな視線を向けてくる。

あ、眼鏡が外れてる?

魁先輩は黒縁の眼鏡を掛けているので眼鏡を外している所を見た事が無い。

うわぁ・・・モデルみたい・・・・・・。

いつもは大体、早口言葉で捲し立てて抱き締めてくるのであまり顔を見た事が無かったがここまで整っていたなんて・・・

「桃園さん?」

「え、あ・・・すみません。先輩は大丈夫ですか?」

目の前に先輩の顔があると言う事は、どうやら倒れたが先輩が途中で支えてくれたが、そのまま先輩は私を庇って倒れてくれたようだ。

急いで離れようとすると先輩の手が腰に回り動けなくなる。

「せ、先輩?」

「・・・・・・・・・っ、桃園さん・・・」

そのまま先輩の顔が近付いて来て思わず目を瞑るとガチャと扉の開く音がして、先輩から急いで退ける。

先輩も急いで眼鏡を掛け近くにあった本を手に取った。

「桃華ー?」

声を掛けてきたのは同じクラスの女子で顔を上げると先輩が居たのに驚いたのか少し言いづらそうな顔で言った。

「な、何?ど、どうかした?」

「先生が呼んでたよ。早く行かないとおこられちゃうよ」

「じゃ、じゃあ。先輩、後で!」

「あ・・・・・・はい」

少し熱くなった頬を冷やす為に私は先輩を見ないで、その場を走り去った。