サッカーのグランドの端で何人かの集団があった。
そこに咲ちゃんとふたりで向かう。
後ろの方に腰を下ろせば初めましての林先輩が中心となり話していた。
「すごいね。この人」
小さく咲ちゃんに話しかければ、話に夢中の彼女は気づいてくれなかった。
すごいよ、この人は。
林先輩は、今の1年生のことなんか知らないだろうけど、皆に公平に話してる。
ひとりひとりの目を見て。
「カナダのフレーザーバレー大学に決めたんだ」
先輩のその一言で、少し嬉しくなった。
単純だけど。
高校の時に、1度行った、カナダへのホームステイ。バスで乗り過ごした事があり、その時にその大学をみた。
通えたらかっこいいよなぁって。
「カナダって夏はすごく過ごしやすいんだ。知ってるかな」
少し大袈裟に頷いた。
「あ、そこの後ろの君。わかる?」
「え。あ、はい」
「もしかして、行ったことある?高校時代とかに」
「ほ、ホームステイで」
「すごいね!いいよね!カナダ」
へへっと、いきなりのフリで照れながら答える。
「ホームステイって、」
ぼそっと隣から低い声がした。
横を見れば森永くんがいた。
「たかが、2週間弱の旅行だろ」
「りょ、旅行じゃ、、ないもん」
「周りに日本人だらけの教室で英語学ぶのと変わんねーよ」
「そんな、こと。」
確かに、夏休みの2週間だったから、地元の生徒との触れ合いは一切なかった。
でも、その分、たくさんの経験はした。
ホームステイ先の小さい子達からもたくさん学んだし。
味のあるモノだったと思ってる。
「俺のアメリカに1ヶ月間の留学に比べたら底辺だ。」
彼は、プライドが強い人だ。
だから、自信のない弱気な私の事を馬鹿にする。
もう、慣れてきたけど
気にはする。