「……はぁ」



あのあと姫花の家を出たあたしは、まっすぐ家に帰る気にもなれなくてふらふらと街を彷徨っていた。



時間はちょうど9時を過ぎたころ。姫花の家を出たのは7時くらいだったから、2時間も外を歩いていたことになる。



まあ、どうせ家に帰ったって待ってる人もいないわけだし……少しくらい散歩したっていいよね。



あたしが歩いているのは、この地域の中でも特に治安が悪いって言われてる寂れた商店街の裏通り。



ほとんどシャッター街みたいになってるから、夜はヤンキーの溜まり場になる。



小さい頃はよく、危ないから近づいちゃだめって言われてたっけ……。



でも、なんとなくこの独特の空気の暗さは嫌いになれないんだよね。



歩いていると、少し落ちつくっていうか。