その子が姫花ちゃんだって、知らなかったはずなのになんとなくわかった。
背中まで伸びたつやつやの黒髪に、陶器のように真っ白な肌。ぱっちりとした瞳の真ん中にはキラキラと光る大きな黒目があって、下向きに生えた長いまつ毛が下瞼に黒く影を落としていた。
かわいい……。
この子はみんなが望むものを全てもっているんだな、と直感した。
『姫花お嬢さま! お部屋でゆっくりしていらしてとあれほど……』
『えー? 姫花もう元気なのに……退屈だよ、ちょっとくらいお話ししてもいいでしょ?』
ねえねえ、と服の裾を引かれた家政婦さんは『……お父さまには内緒ですよ』と諦めたように笑った。
『よかったら姫花の部屋で遊ぼう? 名前は?』
手を引かれるままにあたしと悠斗はその、お城みたいなおうちにお邪魔することになった。
