『これ、姫花ちゃんの家に届けてあげてほしいんだけど……』
そう言って先生が渡したのは連絡ノート。
『でも、姫花ちゃんのおうち知らない……』
『学校に来るとき、大きなお城みたいなおうちがあるのわかる? あそこが姫花ちゃんのおうちよ」
『……!』
白くて大きい、お城みたいな家。当然その存在は知っていた。
悠斗と帰り、よく一緒に眺めては「大きな家だなぁ」「お姫さまが住んでるのかもね」なんて言いながら帰っていたから。
……そのお城みたいなおうちに住んでいるのが、姫花ちゃん。
『わかった!』
そのノートを届ける理由はもちろん、病気がちで1回も学校に来られていない女の子が心配だったからだったけど……その中に少しだけ、このノートを届ければあのお城のことが知られるかもしれないという好奇心もあった。
