▼ 4月。 桜の花が舞い、柔らかい風が頬を撫でる。 「……憂(うい)!」 あたしに気づいて駆けてくる幼なじみのパリッとした新品のスカートの裾が、ふんわりと翻る。 「捜したんだよ! 憂、すぐいなくなっちゃうんだから……」 「ごめんね、つい色々と見てみたくなっちゃって……」 そう言うと、幼なじみ……高嶺姫花(たかねひめか)は、にっこりと笑ってあたしの手を握った。 「高校生になってもよろしくね、憂!」 「もちろん。本当……同じ高校に受かってよかった」