醸太朗が来てくれたことに安心したのか、体に力が入らなくなってその場に座り込んでしまった。


それを見た醸太朗は私の方まで来てくれて、優しく抱きしめてくれて、涙が止まらない。


「醸太朗…怖かった…」
「そうだよな、怖かったよな、来るの遅くなってごめん」


来てくれただけでも嬉しいのに、うまく言葉に出来なくて首を横に振ることしかできなかった。
私の顔を自分の肩に押し付けて周りを見えなくしている状態で、醸太朗は相手に話し始めた。


「あのさ、これからまた千咲に関わって泣かせたらただじゃおかねーから。さっさと諦めろ。」
「は!?ふざけんな、なんでお前にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ!お前戸沢のなに?部外者が入ってくんな!」


醸太朗が言い返すのをやめた。
多分、戸沢のなに?って聞かれて答えにくいんだと思う。

戸沢のなに?か…
きっと醸太朗は、彼氏でもないし、ただの幼馴染みとしか思ってない。
気持ちを伝えるには、私達の距離は近すぎた。

その時だった。