小さな部屋の居間に二人が座る





俺は、
ジャンパーのポケットからリボンを差し出した

そして俺は膝の力が抜け、
そのまま正座になった


「・・・・本当に 有難う・・・・」

   





 ロマンシアさんの溜息

ロマンシアさんは
久しぶりに再会した僕に対して
少し遠慮がちだった緊張の糸が途切れ、
表情が一気に崩れた
     
  




















  乾燥した小さな部屋 
  ロマンシアさんの目には、
  蒸発しそうな涙の湖が溢れている
        


 






 








俺はそのまま正座
 
アイナに対しての罪悪感



















俺「僕らが中学3年生の頃、
アイナはこのリボンを失くしました

 

 窓の外を眺めながら
 ロマンシアさんは「うん」と頷いた



俺「しばらく見つからないままでしたが」

「実はあの後」

「保健室で見つけたんです 僕が」

    
  







  雪の降る音が窓に響く       
 
「あの日、数学の授業中だったと思いますが、
僕は風邪で熱が39度超えて、
フラフラで担任にも保健室の先生からも、
授業はいいから寝てろ!と言われて・・・」

「で、ベッドは三つあって
どれも空いていて
友達に休んでるのがバレるのが嫌だった・・・
今から考えるとそう思います

なので、
窓側ではない、壁際のベッドにしようと
で、
そこは
たまたま
アイナがいつも休んでいたベッドだったんです

で、

「ベッドの隙間に「コレ」が落ちていました」







ロマンシア 「そっか」

  「あの子 保健室に落としたんだね 

   





  
  


  俺は黙って頷いた


ロマンシア「あの子は
      リボンを失ってから 
      毎日の様に 
      保健室の先生にお世話になる事が
      増えてしまってね」

俺 「そうなんですか?」



 ロマンシアさんはコクりと頷いた 



ロマンシア 「元々面倒臭がりで、
たまに仮病を使って授業を抜け出している事は
知っていました」

俺 「そうですね(笑)」
 
  俺とロマンシアさんは一瞬 
  笑いで緊張の糸がほどけた 



ロマンシア「アイナは幼い頃から
母親としても
自慢出来る程の健康体でした」


  俺は同意の相槌(あいづち)をした 



ロマンシア 「ただ、

   リボンを失ってから 
   アイナの体調は激変しました」

  



  ・・・・・・・・・・・・・?



 


 確かに今聞くと、思い当たるフシはある

 アイナと初めて出会ったのは小学校5年生

 あの頃はあんなに活発で健康的だったのに、

      

しかも
あのリボンを失くした時期から授業中に
具合が悪いだの
好きな体育の授業でも
運動したくない!やる気が出ない!だの

  中3の時期は皆デリケートになりやすいし、
  アイナもその程度かと思っていた

ロマンシア
     「アイナは劇的に
      体力がなくなっていきました」




   俺は、信じられなかった

ロマンシア「毎朝、アイナは一人では
とても起き上がる事が出来なくなり
私が手を貸さないと
玄関を出る事も、
登校すらも出来ない状態でした」

   
   俺は更に耳を疑った
   
ロマンシア「・・・・・そして
     
  病気以外の
  深刻な事態も起きていました」
 


俺 「深刻な事態?」


ロマンシア「学校中の女子生徒からの
      陰湿な嫌がらせです」

     
   


    まさか・・・
   




    そんな話
    俺は聞いた事がない





ロマンシア「アイナ本人から
   直接聞いた訳ではないのですが・・
   母親の私には
   目につく場面が多々ありました」

 

  「今まであんなに仲が良かったはずの
   お友達が・・・
   急に手の平を返したように・・・」
      
 
  
  いやいや、待て! 
  俺は知らない!



ロマンシア「ただ...
  男子生徒や学園の先生方からは
  何も嫌がらせはされていなかったはずです」

     
    俺は素早く頷いた





ロマンシア「そういえばアイナは
      このリボンを結び始めた
      小学校5年生の頃から、
      君とも仲良くなり始めたんだよね」






俺「はい 確かにそうです」    

ロマンシア

「実は、
     君にはずっと隠してきた事があります」

    
 





  
 















 ~私はアイナの実の母親ではありません~ 



   
    まさかの寝耳に水だ



ロマンシア 「私の本当の名前は」

   (ロマンシア マドレーヌ)
 

「私の代々の家系は、
 ヨーローッパのある地域から移住してきました」


   ヨーロッパ? 
   名前からしてフランスあたりか?



「私は30代半ばに、この国に移り住み始め、
 その頃に働いていたお店の男性常連客と
    
   次第に仲良くなり始めました」

「そして、
 その男性と安いアパートで
 一緒に住む事になったのです」 

「その男性が引き連れて来た子供が、
 何を隠そう(アイナ)なのです」



「私は
 その男性の娘であるアイナと一緒に住む事

 急にそんな事言われても・・・・と

 少しの間、返事をためらいましたが
  
 すぐにアイナを受け入れました」


     
      良かった!




ロマンシア
 「ただ....
身近に潜む(ダークパワー)を
 感じ取りながら」



    俺「ダークパワー?」







 そういえば、
 アイナも以前同じ話をしていた      






ロマンシア 

    「私ども、ロマンシアの家系は
    
    ダークパワーを信仰しておりました

  

 「ダークパワーとは、

  この宇宙の銀河を取り囲む沢山の
  ダークマターの力です
  
そして我々はその
  ダークマターの力を信仰してきた
  民族の末裔(まつえい)です」










「ダークパワーの本来の教えは、

 我々がどんなに少数派であっても、
我々が一致団結すれば
必ずや目的は叶えられるという教えでした」

「我々はその教えを信仰する集団を
  
 (ダークマターズ) と呼んできました」








  「ダークマターズは300年以上の
  集団結束による宗教活動の歴史を経て
  新たなる信仰パワーである
  (ダークエナジー)を得ました」






  「ダークエナジーは、自分達にとって
  一番ネガティブなコミュニティ(環境)
  に存在する特定の人間達の生命力と引き替えに
  エナジーを放出し、
  そのコミュニティ(環境)に
  ダークパワーを広めていきます」










「特定の人間達が、
大多数であればあるほど、
カウンターパワーとして一気に上昇します」

「差別や社会問題に立ち向かう人々にとっては
 まさに救世主でした」

「実は
 予想以上に、我々が生きている世界には
 ダークマターズが存在しているようです」


「そして」



「そのダークエナジーを悪用する
 新たな (邪教)  
 が生まれてきました」

「彼らは普段は味方の姿に扮していますが、
 (ある条件が揃った人間)に対しては
 敵とみなし・・・
    
     「監視し、攻撃します!」

「彼らは、物理的に生命を奪うのではなく、
人間本来の
健康的で文化的な生命力 
モチベーションを奪っていきます」

  「ある条件が揃った人間とは」




「魅力的な」
「才能」 を持った

「沢山の人に好かれる」  
「思春期の女性」   

  
  


「本来の教えから離脱した邪教
それが」
   
  (現在のダークマターズ) です


「この条件が
 不運にも揃ってしまった(アイナ)は

 将来思春期を迎えるのと同時に
 彼らのターゲットにされる危険性を
 私は危惧していたのです」