あれから、

アイナの繊細で、
何処か寂しげな鼻歌が頭から離れずに
なかなか寝付けなかった

いつものように俺は
朝アイナと顔を会わせた

俺は若干の罪悪感があり、
アイナに挨拶をためらってしまったが...




アイナ 「ネズ君、おは!」




俺は、
肩の力が一気に抜けたのと同時に
笑顔で返した











アイナ「ネズ君 実はさ・・」








3か月くらい前に
今までずっと大事に付けていた私の
 
   「リボン」
 






 



 「あのリボン」
「何処かで失くしてしまったの」


 
     ほう...











アイナ「家に帰って、部屋に戻って、
着替えついでに髪を触ったら」 
    


 「あれ?!リボンがない・・・!」



「あのリボンがないと、
外も歩けないし、
学校にも通えないし、
ましてやステージなんて・・・



   「絶対無理!」













・・・・・・はぁ
 






てか、
そんなに大事なリボンを
えらく簡単に失くしたもんだよなぁ・・・・・




 ありがちなパターンとして、
 老人がメガネを探してたら、
 頭にかけてたのをすっかり忘れてて
 思いっきり恥をかくっていう
 古典的なケースだってあるからな











俺「案外 

 アイナの部屋のベッドの下とかに
 落ちてるんじゃないのか?」









アイナ「ワタシの部屋ベッドないから!」





俺「・・・あれ? そうだった?」 





てか・・そういや

アイナの自宅には
7~8回くらいお邪魔した事があるが、

居間で
お母さんのロマンシアさんと3人のみで雑談



2階のアイナの部屋には
まず入れさせてくれなかったもんなぁ










アイナ「ていうか、
ベッドってあんまり好きじゃないんだよね」
   
    


   ほう

 





アイナ「ほんと言うと、
今住んでる洋風の一軒家も
何となく落ち着かないのよ・・・」


 


 


「昔住んでた木造アパートに戻りたいなぁ」


 



 


     ....へ~...






てか 
ベッドじゃないって事は、
布団敷いて寝てるのか?





意外な情報だった・・・

てか木造アパートに戻りたいって、
よくわからん欲求だな

てか

アイナの性格上
アパートの近隣住民と
騒音トラブルになりそうで
想像しただけで恐ろしい・・











アイナ「リボン」

 
「ワタシも色んな所探すからさ」

俺 「・・・おう...」    



アイナ「ネズ君も」
  「もし見付けたらワタシにすぐ教えて!」











  俺「わかったよ・・・」






あんな派手なリボン
そこら辺にただ落としただけだったら
すぐに誰かが見つけてくれるだろう 



心配は特にしないでおくか   
  















気付けばアイナの姿はもうなかった




  「さて、俺も帰るか!」   

























俺はいつもと変わらぬ地元の街並みを
いつものように
トボトボ歩いて帰るのであった。



 







 「溜息混じりの秋」である。