「翔平ー。」



もう聞きなれた怠そうな声。
ニヤけ顔に力を入れて振り向けば、さっきの女の子と一緒に待ち合わせしてた 小倉 俊(おぐら しゅん)が手を振っていた。






「翔平、彼女置いて何してんだよ」


「か、彼女じゃないですっ」




俊の冗談に真面目に顔を赤くして必死になる女の子。
誰だっけ




「さっき、声掛けてくれた人だよね?」


「あ、うん。」


「なんか、ごめんね」


「いえ、全然。」





俊は何かを企んでる顔で女の子の顔を覗いた。





「君さ、翔平と仲良くなりたいの?」





女の子は一瞬驚いた顔をしたが、思いっきり笑顔で頷いた。






「あー、でも。どうだろう。こいつ好きな人いるしな」


「え、そ、そうなん、ですか」


「ん。小谷佳奈さんっていう」


「え。佳奈先輩っ」





やっと、まともに女の子の声が耳に届いたかもしれない。





「君、知ってるの?」




いきなり食いついた僕に身を引いていた。





「ん。私、インドネシア語専攻で」


「マジで?!」






少しセコいが、女の子と連絡先を交換してあわよくば、彼女と。

なんて考えで。






「翔平、お前。馬鹿だろ」






俊の言葉に何も考えず素直に返事した。