【吉田 翔平】




高校3年生の夏。







初めて味わった、誰かに惹かれるという感覚。

あんなに魅了させられるなんて。







病気みたいに、感染したかのようだった。








暑い外とは真逆の涼しい室内で、神田外語大学の入学説明会の日。
僕はひとり端の列で説明を聞いていた。
周りは親か友人連れが殆どで、僕と似たような人は見当たらなかった。

だからなのか、人をいつもより観察してしまう。
真面目で勉学にしか興味なさそうな子や、自我に自信むき出しの子、奇抜で目立つことが好きそうな子、それからいかにもこの大学に行きますという正統派な子。

僕はどの分類だろうか。





一通り終わった説明の後、申し込んでいたキャンパスツアー。1度友人と訪れたことがあったが、その時は友人が話していてそっちに気を取られてしまった。
ただ、その時から興味があった。他の大学に行っても感じないモノが、強く僕を魅了したからだ。







でも、この日は。
全く別のモノに惹き付けられた。











綺麗な白い一輪の華に視線を釘付けにされて

小さな棘で見た目とは裏腹に鋭く胸を刺された。



そして、甘く癖になる毒を




僕に。














ツアーの団体の先頭になったのは運がよかったのかもしれない。






小谷 佳奈(こたに かな)と書かれたネームプレートを首からさげて、”キャンパスツアー”と書かれた小さな旗を右手に持ち、一生懸命にあげる彼女。



その真っ白な肌は太陽が鋭く照らすこの季節には似合わなくって、長く綺麗な黒髪は逆に涼しげな印象を与えた。
彼女の声は僕の耳に録音されるかのように美しく流れた。



ガイドのあの、大学生に、僕は、、。