相変わらず彼は目立つことのない存在で、あの朗読と同じく、淡々とした毎日を送っている。

そんな彼を私はいまだに遠くから見ているに過ぎない。

正直なところ、彼については名簿に載っているような情報以外は何も知らない。

友達にもなりきれていない、ただのクラスメート。

にも関わらず、私は相変わらず彼の声を聞くたびにじわりと独特の感覚が身体中に広がるのを感じているのだ。

不思議なことだと思う。

「それが恋ってものなのよ」、そう言って私を笑った友人もいた。