私は背中を丸めるようにして、身構える。佐伯さんの指が肩甲骨の間に触るとやっぱり声が出そうになって、自分の手のひらで口を押さえた。佐伯さんは一本ずつ線を背中に引いていく。
「わ、わかんないですって」
佐伯さんの指が背中に触れていると思うと、全然集中力が続かない。
「集中して」
「できませんって」
シャンプーの香りと、布越しの柔らかな圧力は、経験したことのないものだった。
「じゃあ一文字ずつ書くから」
佐伯さんはゆっくりと指を動かした。私は涙目になりながらも、一生懸命その指を追った。
「2」「0」「1」「2」
「正解」
佐伯さんの指が離れ、ほっと息を吐いて丸めていた背筋を伸ばしたが、突然首の後ろに指が触れた。
私は驚きでビクッと体が震える。指は首にかかっていた髪をそっと避け、それから気配がゆっくりと近づいた。緊張でガチガチになった肩に、佐伯さんが手を添えて、それから首の後ろに暖かな何かが触れた。
何?! 何が起こった?
目をぎゅっと閉じると、触れている場所に鈍い痛みを感じる。
それからそっと気配が離れた。ドキドキがマックスで、くらくらしてきた。
私は恐る恐る後ろを振り向く。佐伯さんの顔はほとんど影に隠れて表情がわからない。

