「飲めば?」
私が言うと、やっと「ああ」と言ってサイダーを飲む。ごくんと喉が動くと「そっか」と言った。

「野中は、その佐伯って人のこと好きなのか?」
そう問われたとたん、佐伯さんが告白してきたときの様子がバッと頭に蘇った。心臓がゆっくりとスピードを上げてくる。

「……わかんないよ。だって、どこで会ったかもわかんないし。よくしてくれてるのは感謝してる。アパートが壊れちゃって路頭に迷ったときも、自分の部屋を一つ貸してくれたし」

「は?」
千葉が眉を上げた。「何、もう同棲してんの?」

そう言われると、すごくいかがわしい気がする。私は慌てて「同棲じゃないって! 同居ではあるけど、佐伯さんは仕事部屋に入りっぱなしだし、あんまり部屋で合わないよ」と言った。

「手出されてる?」
千葉が慎重に訪ねてきたので、ぶんぶんと勢い良く首を振った。

「ぜんぜんそんなことないって、私とは縁がない話だよー」
私は、そんな千葉の心配を笑い飛ばした。

すると千葉はまた「そっか」と言ったきり黙ってしまった。