「本当にいい会社だなあって思うわ」
山本さんが肘をついて、ちょっと首をかしげる、そのしぐさがとても可愛い。
「社内恋愛も推奨でしょ? 西島くんと森山さんは、秘密にしたりせずにおおっぴらだし、二人でタイミングを合わせて休暇をとっても、嫌味とか言われない」
「へえ」
佐伯さんはビールを一口飲んで、自分の耳を触る。
「塩見さんは、恋人いる?」
山本さんがさりげない様子で尋ねた。
「いないよ」
佐伯さんがそう答えると、西島さんが目で何かを訴える。これはわかる、山本さんが探りをいれてるよっていう意味だ。
「でも、長く片思い中」
佐伯さんの言葉を聞くと、ドキッと胸が騒いだ。私はごく普通の感じで「焼きあがってますよ」と声をかける。とにかくこの話題をチェンジしたい。
でも誰もが私の言うことに耳を貸さずに、身を乗り出すように佐伯さんに注目していた。
「片思い? 本当に?」
少なからずショックというように、山本さんが尋ねた。
「そうだね、告白したけど、返事をもらってない」
「なんでーっ」
森山さんが立ち上がるぐらいの勢いで、佐伯さんに詰め寄った。
「俺のこと、覚えてないって言われたからかな。思い出してからでいいって保留してる」
「へえ」
城島さんが、ちょっと憧れるような眼差しで佐伯さんを見つめた。「一途だね」
私はもうばっくんばっくん心臓が動いて、変な汗もかいてきた。自分のことを話されるっていうのは、むずがゆくって恥ずかしいんだな。

