私は気をとりなおして、その場を片付けてリビングに入った。佐伯さんはキッチンで冷蔵庫を開けている。
「もっと食べる?」
振り向きざま尋ねられたので、私は首を振った。動揺しすぎて胸がつかえたみたいに苦しい。
「じゃあ、冷蔵庫にしまおう」
佐伯さんは先ほど二人の間に流れた空気はなかったのように、ごくごく普通にしゃべる。それを見ていたら、意識している自分がバカみたいに思えてきて、「手伝います」と佐伯さんと一緒にキッチンの後片付けをした。
「風呂入れば?」
佐伯さんに言われて、私は飛び上がった。
「あの、私は後で」
「いいの? 疲れてんじゃない?」
「平気です。タフが取り柄なんで」
私がいうと佐伯さんはクスッとわらって、「そう? じゃあ、俺もらっていい?」と言ったので、私は勢い良く頷いた。
佐伯さんがバスルームへと消えると、私はほっと息をついた。そばに男性の気配があるだけで、こんなにも緊張するものなのかな? この生活を続けていたら、そのうちぶっ倒れちゃう。
遠くでかすかにシャワーの水音が聞こえる。私は自分の部屋に戻って、ベッドに転がりスマホでニュースを見たりしたが、どうにも落ち着かない。嫌になるな。
しばらくするとドアが二回ノックされる。私はぴょんとベッドに正座した。