「へー、いよいよあいつの思いが実るのか、なんか嫌ね」
「で、でも、もしご存知なら教えて欲しいんです」
「そんなの、塩見に聞けばいいじゃない」
「自分で思い出して欲しいって言われて」

そう言うと「はっ」と乾いた笑い声が、その綺麗な口から発せられた。

「いわゆる中二病ってやつね、それ。運命感じちゃってる系でしょー?」
坂上さんは会社にいるときと全然雰囲気が違う。口が悪いのは、お酒が入ってるからかな?

ビールを一口ぐびっと飲んで、足を組み替える。
「知ってるけど、教えるのはどうしようかしら。わかったら告白してハッピーエンドでしょ? 嫌よね、それ、ご都合主義の漫画みたいで」

坂上さんの唇がニッと笑う。
「まだ、手出されてないでしょう?」

突然何を言うんだろう。私は「へっ」と奇妙な返答をしてしまう。体が熱くなってきて、汗をかいてきた。

ふふっと笑うと、坂上さんは頬杖をつく。

「今は中学生の恋みたいにやってんだろうけど、一旦タガが外れちゃったら、あいつはケダモノだからね。壊されちゃわないように気をつけて」

「け、けだもの?!」

言葉が失われる。それは、少女漫画には書かれていないこと……。