私たちはおじさんたちが好きそうな居酒屋へ入った。ビル裏の赤提灯だ。月曜日にもかかわらず、サラリーマンで溢れかえっている。私たちは道路に置かれたテーブルに座った。埃っぽい夏の始まりの空気は、冷房の効いたところよりも心地よい。

「まずビール! 野中さんもビール?」
「はいっ」

坂上さんは、こんなところは場違いな雰囲気かと思いきや、もう違和感なく溶け込んでいる。根が豪快な人なのだ。

「かんぱーい」
坂上さんの掛け声でジョッキをカチンと合わせた。

「ぅー、うまいっ」
坂上さんはそう言ってから、枝豆を押して、ぴょんと口の中に放り込む。

「で? 何が聞きたい? 塩見のことでしょ?」
「は、はいっ」

坂上さんはなんでもお見通しだ。私はごくんとビールを飲むと、ドンッとジョッキをテーブルに置いた。

「私、今、あのっ、佐伯さんと一緒に暮らしてて」
「へえ」

坂上さんの顔は変わらない。

「驚かないんですか?」
「だって知ってるもの」
坂上さんが笑う。

「あいつ、ずうーっと片思いだってね。ざまあみろ」
「……ざまあみろって」

私は予想していた反応と違ったので、戸惑った。どうやって進めたらいいんだろう。