「でも昨日、私はいっつも佐伯さんのことばっかり考えてるなあって気がついて、もしかしたらこれが『恋』なんじゃないかと……私の初めての『恋』なんじゃないかと思って!」
そこまで一気に言い切ると、ふうと一息つく。
山本さんが「ちょ、ちょっと待って。整理させて」と手をあげた。
「塩見さんが片思いしてるっていう相手が、野中さんだっていうこと?」
「……そうだと思います」
「妄想?」
「違います」
「……えーっ」
会議室に二人の叫び声がこだまして、慌てて二人は自分の口を押さえる。
「なんで黙ってるの?!」
「なんとなく言いづらくて。それに私、佐伯さんの告白もなんかピンと来てなかったし」
「はあ?」
山本さんの声がトゲトゲしくて、私は首をすくめた。
「それで、保留してた返事はしたのね?」
山本さんが尋ねるので、私は首を振った。
「まだ、です」
「どうして? 好きだって思ってるんだったら、そう返事したらいいじゃない」
「だって、佐伯さんが誰だか思い出せない」
それを聞いて、二人は目を丸くしながら大げさにため息をついた。
「そんなのどうでもいいよー」
西島さんがいうので、「そういう訳には……」と目を伏せた。

