ヒロインの条件


「昼、どうする?」
千葉とビルの中をプラプラしながらレストランを探す。

「アイス」
食欲がないので、こってりしたモノが食べられない。

千葉は呆れた顔で「それ飯じゃねー」と言う。それで二人で甘味喫茶に入ることにした。ここにはちょっとした定食も置いてある。

席に座って、渋いお茶を一口飲むと、その苦味に刺激されてまた昨日のことを思い出してしまった。あのチクチクするような不快感が蘇る。

「本当にそれだけでいいのか?」
私が頼んだ抹茶アイスを見て、千葉が不思議そうに尋ねた。

「うん、食欲なくて」
スプーンを加えながらそう答えた。

甘味喫茶は昼時なので混んでいて、少し声をはりあげないとお互いの声が聞こえない。すると千葉が「もうちょっとイイところ調べておくべきだったな」と申し訳なさそうに言う。

「なんで? ここいいところだよ。アイス大好き」
私はもう一口食べると、ニコッと笑った。

「でも一応デートだし」
言いづらそうに千葉が言う。デート……そっか、これデートだ。

「こういうのがイイよ。楽チン」
私が言うと、千葉が微妙な顔をする。あれ、なんか悪いこと言っちゃったかな?