その日は1日どんよりと過ごした。チクチクした痛みは今や背中にかけて広がっていて、今朝感じた幸福感を伴うけだるさは今や苦痛を伴っている。
佐伯さんのことを考えると胸が痛む。泣きたくなる。なんでだろう、こんな自分はとても嫌だ。
私は終業を待って、いち早く会社を出た。すぐにでもベッドに転がりたい気分だったけれど、佐伯さんよりも先にマンションに帰りたい。顔を合わせたくない、だってきっと、嫌なことを言っちゃう。
早く帰って、鍵を閉めよう。それから寝るんだ。寝たらきっと気分も上がってくる。
「明日は千葉とデートか」
千葉と先日道場に出かけた時、とても楽しかった。なんの気遣いもなくて、最後の告白にはびっくりしたけれど、でも私らしく元気でいられた。こんな気持ちのアップダウンで具合が悪くなるなんていう、私らしくないことを、千葉はきっと笑い飛ばしてくれるだろう。
千葉も、私と同じような気持ちなのかな? だったら、千葉と一緒にいたほうがずっと楽しい。佐伯さんなんか……。
私はぐっと唇をかんだ。
その夜は部屋にこもって過ごした。ご飯を食べる気力もない。佐伯さんが一度ノックをしたが、私は「夕飯は食べなくても大丈夫です」とだけ言って、顔を合わせなかった。
自分らしくない。もっと戦ってもいい、この嫌な気持ちと。でも信じられないほどに気力がなくて、自分自信で嫌気がさしてしまう。

