「……わかる」
私は少なからずショックを受けたみたいな声がでる。だって本当に無理してる感じがあるんだもの。
どんな関係なの? あの人。
覗き込むのをやめて、廊下で西島さんと二人で世界が終わったみたいな顔で黙っていると、「どうした?」と声が聞こえた。
顔を上げると、なんと話題の二人がそこに立っている。
ああ、やだ。すごくお似合いだ……。
私は突然涙が出そうになったから、必死に口元に笑みを浮かべようとした。佐伯さんが私を見て少い訝しげにする。
「野中さん、熱あるんじゃない?」
佐伯さんがいつもどおりの調子でたずねてきた。
私はブンブンと首を振って「大丈夫です」と答えると、坂上本部長が「あれ?」というような顔をして佐伯さんの顔と私の顔を見比べる。
「失礼します!」
私はこれ以上二人の姿を見ていられなくて、大きな声で頭をさげると階段へと走った。西島さんを置いてけぼりで申し訳なかったけれど、人を気遣うなんてこととてもできなかった。
ああ、何この気持ち。やだ、こんな自分。
自分の席へ舞い戻ると、無心でパソコンを打ち出した。何も想像しない、何も考えない。漫画のヒロインにも必ずライバルが出てくるけれど……実際にはこんなに辛いんだ。
辛い?
私はキーボードを叩いていた指をピタッと止めた。
なんで辛いんだろう。山本さんと佐伯さんが並んでいた時にも感じたけれど、今回のはもっともっとしんどい。だって佐伯さんのあの顔が……。
ぐっと息を呑みこんで、再び入力しだす。
ヒロインを楽しむなんてこと、とてもできない……。

