ヒロインの条件


二人で5階に降り立つと、山本さんが「モチベ上がる」と満面の笑みを浮かべている。

「何にですか?」
「塩見さんに」
山本さんがパチンとウィンクすると、たまらなくキュートだ。

「秘密を共有できるって、すごく恋愛面でメリットがあるの。実はこの会社の社長だなんて、美味しすぎるよね。俄然、やる気出てきたってこと」
「で、でも」
私の声が思わず上ずる。
「片思い中だって言ってましたよ」

すると山本さんは「所詮、片思いでしょ」と笑う。「相手が振り向いてくれないのなら、思うだけ無駄なの。私なら、塩見さんが『諦める』手助けをしてあげられる」

私はぐっと喉が詰まったみたいになって、黙りこくってしまった。

私のことなんだよね、片思いの相手って。じゃあ私が全然返事をしなかったら、いつか佐伯さんは私を『諦める』ってこと? 返事をしない私が悪いんだけど……なんかモヤっとする。

「塩見さんはすごく難しいタイプだと思うけど、頑張るから見てて」
山本さんは自信満々にそう言った。