ヒロインの条件


「佐伯さん、すみません」
私は頭を下げた。目が赤くなっているところは見られたくない。「本当に嘘つくのが下手で……」

「いや、俺が嘘をつかせたんだ。嘘つくの嫌いって言ってたのに、無理をさせて悪かった」
佐伯さんの優しい声に、どんどん涙が溢れてくる。

私は俯いたまま頬を手でぬぐうと、頭をポンポンと佐伯さんの大きな手をが撫でてくれた。

「野中さんは、そっか、社長の顔を見たことあるって言ってたから、最初からわかってたんだね」
西島さんは力が抜けたような声で呟く。

「ごめんね」
私は涙ながらに西島さんに謝った。

「いいよ、大丈夫。私だって口止めされてたら、喋らなかったと思うから」
西島さんは驚き冷めやらぬという感じで言う。それから「社長、本当に申し訳ありませんでした」と頭を下げた。

「ほら、これ」
佐伯さんはソファに座りなおすと、髪をかきあげて、不服そうな顔をした。

「もう俺のことを社長だって距離を取り始める。こういうの嫌なんだ。できれば今まで通り『塩見日向』として接してくれない?」

「そう仰られても」
西島さんは憧れと尊敬の気持ちが強いせいか、困惑を眉の間にのぞかせて、受け入れがたい表情だ。