「佐伯さん、スマホ忘れてますよ」
そう言いながら三人を振り返ると、きょとんとした山本さんと西島さんの顔が見えた。
「佐伯?」
西島さんがつぶやき、それから佐伯さんの顔を見あげる。
すぐには何が起きたのかわからなかった。山本さんが「……塩見じゃないの?」と言ったその言葉で、うわっと全部がわかった。
私はとっさに自分の口を押さえたけれど、後の祭だ。佐伯さんが笑顔で、それはもう本当に爽やかな笑顔で「野中、やったな」と言う。
「え? 塩見じゃなく佐伯……日向?」
西島さんが佐伯さんが胸に下げている社員証を見つめながらつぶやき、それから顔に火がついたみたいに真っ赤になった。
「佐伯日向……社長。やっぱりっ、絶対そうだと思った!」
西島さんは叫ぶみたいに言った。山本さんも頬が紅潮して「うそ」と叫ぶ。
「申し訳ありません! 同期だなんて言ってタメ語を使って」
山本さんが深く頭を下げる。私はもうどうしていいかわからず、おろおろするばかり。その中で佐伯さんだけは、楽しそうに笑っている。
私はホッとした。どうやら怒ってはいなさそうだ。でもそっか、シス管で働くのも終わっちゃうんだな……。
すごく寂しい気持ちがこみ上げてきて、目がうるっとしてくる。自分が失敗したくせに、自分で泣くなんて変な話なんだけれど。

