ヒロインの条件


「じゃあ塩見さんが留守を預かっているってこと?」
山本さんが尋ねる。

「まあ、そんなとこ」
「じゃあ、野中さんのカードキーの設定直すのって塩見さんに頼めばいい? 野中さんのカードでこの部屋が開くんだもの」
山本さんがそう言うと、佐伯さんはちらっとこちらを見る。

見られるだけで、ドキッとするのはなんでだろう。ほっぺたがカッカしてくる。

「……そっか、じゃあ再設定しなくちゃ。野中さんちょっとこっちきて。二人はここで待っててくれる?」
佐伯さんは立ち上がると、ウォーターサーバー隣のあの部屋のドアにカードキーをかざして開ける。

私はカードキーをぎゅっと握ると立ち上がり、佐伯さんの後ろについていった。

部屋の中は相変わらず薄暗い。後ろの扉は開いたままで、二人の視線が背中に突き刺さっている気がした。ちょうど私の背中で佐伯さんの姿が隠れるような角度だ。

佐伯さんはパソコンの前で「カードキー」と手を差し出したので、私は手渡した。

「すいません」
私は本当に小さな声で謝った。「止められませんでした」

「いいよ、別に。来るかなーって思ってたから」
佐伯さんは私のカードキーをスキャナーのようなところに差し込み、なにやらキーボードを叩く。

「本当はさ、野中のキーを使えるようにしておきたかったんだけど、ま、しばらくはしょうがないね」
佐伯さんの手元から、カタカタとキーボードが鳴る音がする。

その素早い動きに、私は目を奪われた。薄闇の中、モニタの青白い光が佐伯さんの指に当たって、その繊細な線が際立っている。

綺麗な指。