ヒロインの条件


「いいよ、入って」
佐伯さんは私たちの間を割って入り、ドアを開け、ライトをつける。白い光た瞬いて、以前きた時と変わっていない、ホワイトボードとソファ、ウォーターサーバーのみの、割と殺風景な部屋が現れた。

山本さんが先頭をきって部屋に入り、西島さん、私と続いた。西島さんはキョロキョロと部屋を落ち着かなげに見回している。

「座って」
佐伯さんは私たちにソファを勧めて、自身も三人の向かい側に座った。

ああなんか、また緊張してきた。職員室に呼び出されたみたいな気持ちになってるのは、どうしてだろう。

佐伯さんはソファの背もたれに体を預け、肘をつきながら耳たぶをいじる。何か考えている様子でしばらく黙り、それから体を前に倒して膝に両肘をついた。

「確かにここは『社長室』だけど、残念ながら僕は社長じゃないんだ」

とうとうバラすのかと思えば、ちゃんと嘘をついている。私はホッとしならも、少し複雑だ。また私は嘘をつき続けなければならないということだから。

「でも、僕と彼は友達で、その関係で入社した」
昨日言っていた設定で押し通すつもりなんだ。平然と嘘をつく佐伯さんの整った顔を、私はある意味尊敬を込めて見つめる。肝が座っているんだろうなあ。

「お友達!?」
西島さんが前のめりになる。「社長とお友達なんですか」

「うん」
佐伯さんは笑って頷いている。西島さんが佐伯さんのファンだということを知っているので、つい笑みがこぼれてしまったのだろう。

「今日、社長は出社されてますか?」
西島さんが勢いをつけて尋ねる。

「してないよ。ほとんどしてない」
佐伯さんは首を振った。「ごめんね」