ヒロインの条件


「えー」
西島さんが驚いて私の顔をまじまじと見つめた。

な、なんで開くの?

「入る?」
動揺しながらも、山本さんが尋ねたので、私はぶんぶんと首を振った。
「不法侵入です!」

「でも鍵が開いたってことは、入ってもいいってことなんじゃないの?」
「きっと何かの間違いですよーっ」
私は今にも扉を開けようとしている山本さんの背中を引っ張る。中に佐伯さんがいるのに入るなんてとんでもない。こここはなんとしても阻止だ。

「どういうこと? なんで野中さんまで?」
一方、西島さんはしきりに首をひねっている。ああ、こっちもなんだかまずいことに気がつきそうだ。

「何してるの?」
突然声が上から降ってきて、三人はピタッと動きを止めた。恐る恐る後ろを振り返ると、なんとそこに佐伯さんが立っている。

私は「あっ」と口に手を当てた。山本さんは一瞬慌てた顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。西島さんは驚きよりもむしろ好奇心が勝っているというような顔だ。

「あのっ、聞きたいことがありまして」
西島さんが張りのある声を出した。

「仕事のことなら下で……」
「違いますっ」
西島さんはあんなにもじもじしていたのに、いざ好奇心の対象が目の前にくると戦闘態勢になるのか、ひるむ様子を見せない。私はさっきからおどおどしっ放しなのに、スゴイ。

「塩見さんって、どういった経緯でこちらに入社されたんですか? 私見たんです。このお部屋に塩見さんが出入りしているところを。ここって、この会社で唯一存在しない『社長室』なんじゃないんですか?」

佐伯さんはとても落ち着いている。私がラインしておいたせいか、準備していたのかもしれない。