三人そろって階段で8階に上がった。階段の鉄製扉をそっと開いて、あたりを見回す。役員フロアは本当に静かで緊張が高まってきた。
「そこ、そこの扉」
西島さんが、佐伯さんの部屋を指差した。
足音を立てないようにこっそりと近づくと、何も書かれていない扉の前に立つ。今、本当にこの中に佐伯さんはいるんだろうか。
西島さんがカードキーを取り出して機械にかざしても、エラーの音が帰ってくる。
「ほら、平社員は入れないようになってる。でも塩見さんはここに入っていったんですよ。絶対ただの平社員じゃないし、この役員フロアの一角を割り当てられてるなんて」
西島さんがごくんとつばを飲む。
「社長だとしか、考えられないわね」
山本さんが腕を組んで小首を傾げる。
「ここで出てくるの待ってるんですか?」
私は山本さんに尋ねた。「いつ出てくるかわかりませんよ」
「そうねー」
山本さんは自分のカードキーを取り出して、試しに機械にかざしてみたけれど、やっぱりエラーが返ってくる。
この場を乗り切れるかもしれないと、私は徐々に落ち着いてきた。だって好奇心に負けてここまできたけれど、結局入る術がないのだから仕方がない。私たちも仕事があるし、ここでずっと見張ってるわけにいかないんだもの。
「野中さんがいくら強いからって言っても、この扉を壊してとか頼めないしね」
山本さんは笑いながら言う。それから「試しに野中さんのもピッとやってみて」と言った。
「はあ」
私は仕方なしに自分のカードキーを取り出してかざしてみると「ピッ」と青いランプた点灯する。それからガチャと鍵が外れる音がした。

