振り返ると山本さんが興味津々という顔でこちらを見ていた。私はどうしていいかわからず口ごもる。山本さんみたいにおしゃべりな人に、西島さんが考えていることを知られたら、あっという間に会社に知れ渡るし、そうしたらもう佐伯さんはシス管では働けなくなる。
「実は……」
西島さんが口を開きかけたので、私はパニックに陥ってしまった。ない脳みそで瞬間的に西島さんの告白を阻止するにはどうしたらいいかを全力で考えたが、とてもおいつかない。私があうあうと口を開けたり閉じたりしている間に、西島さんは「塩見さんってこの会社の社長じゃないかと思って」と言ってしまった。
「え!」
山本さんの目が丸くなって、くるんとしたまつ毛のおかげでさらに一層可愛く見える。
「なんで?」
山本さんは西島さんに顔をぐっと寄せてたずねる。西島さんはペラペラとこれまで思ってきた疑念を全部話してしまった。私にはなすすべがない。ただ呆然と佐伯さんの秘密が流れ出ていくのを見ていくばかりだ。
「部屋ってどこ? 見てみたい」
山本さんが両手を前で組んで、ワクワクした顔で言ってきた。
「8階の受付とは反対の突き当たりです」
「ちょっと覗きに行きたいな」
もうすぐ始業だというのに、山本さんがそんなことを言う。
「行ってみます?」
西島さんも強い味方ができたと言わんばかりに、大胆に提言してきた。
「後で!」
私はとっさに大きな声を上げた。「もうすぐ仕事の時間ですから」

